B型肝炎と訴訟問題を考える

はじめまして。 B型肝炎に感染し、これまでとてもつらく、苦しく、悲しい思いをされたことでしょう。ここでは一緒にB型肝炎と訴訟問題について考えていきたいと思います。ここでの知識が、あなたのお役に立ちますように。

弁護士

B型肝炎訴訟を弁護士に委任しない場合、予想外の事案が発生しやすい

訴訟とは文字通り、相手を訴えるということです。訴えるとは、被告に対して「この人(国)は私にこんなひどいことをしました」と、中立な機関に裁きを求めるということ。

B型肝炎訴訟でもこの基本は同じです。しかし肝炎感染者の方の中には「国が悪いのだから、自分で手続きを行えば結論はすぐに出る」と思っている方が多数おられるようです。

「この人(国)はこんなに悪いことをしました」と訴えられた場合、訴えられた側の人(国)が反論をしないのであれば、それはもう訴えた側(原告)の言い分を全面的に認めるということになります。つまり、原告の言いなりになることを認めるのです。

だから当然、どんな人(国)でも訴えに対して反論をします。「そんなことはありません。そんなことを言うのであれば証拠を見せて下さい」となります。

B型肝炎訴訟は確かに国が非を認め、補償をしています。しかしB型肝炎の感染者全員に対して補償をしているわけではありません。国による集団予防接種以外にもB型肝炎に感染している人はたくさんいます。だから国は「証拠を見せて下さい」と必ず述べてきます。

B型肝炎訴訟は厚生労働省の他に法務省の人も提出書類を精査します。相手側は弁護士と同様に法律のプロです。

裁判は提訴のための書類の作成だけでも一般の方にとってはなかなか骨の折れる作業でしょう。ましてその書類を精査する被告側は法務省の役人なのです。ときに思いもよらない証拠の提出を求めてくることも少なくありません。

たとえば、個人でB型肝炎訴訟を行ったものの、途中で、被告側から書類の再提出を求められ、しかもその内容が難しかったり、再提出した後、さらに再々提出を求められてしまえば、もうやる気もわかず、提訴を断念する気持ちにもなりかねません。

このようにB型肝炎訴訟を弁護士に委任しない場合、予想外の事案が発生しやすく、時間も手間も大幅にかかってしまいます。

国側もこれを予期していたために、B型肝炎訴訟では弁護士費用の一部を国側が負担しているのです。B型肝炎訴訟を行うのであれば、専門の弁護士に委任をした方がずっと効率的であることは間違いありません。

B型肝炎訴訟では委任前に弁護士に細かく質問することが不可欠

B型肝炎訴訟を行っている弁護士事務所の多くは、メールや電話で無料相談を受け付けています。感染者の方のほとんどは普段、法律事務所とあまり関わりがないはず。そのため、無料相談といってもどことなく敷居の高さを感じて躊躇してしまう印象があります。

でも、実際のところ、無料相談を躊躇してしまうのはとてももったいないことです。むしろ使い倒すくらいの勢いで無料相談を使うべきだと言えます。というのは、無料相談を行うことで、その事務所の雰囲気や規模、能力などが漠然とわかるためです。

たとえば電話をしたところ、弁護士が直接出る事務所もあれば、受け付けの事務員が出るところもあります。しかし事務員がまるでメールのテンプレートのように事務的に、質問を切り返してくるような事務所だったら、そこはちょっと安心できません。また、仮に弁護士が出てきても、いかにも面倒くさそうな態度だったり、居丈高な言葉遣いだったりすれば、やはり委任をしたいとは思わないはずです。

丁寧な対応の弁護士であったとしても、質問の内容に口ごもったり、もしくは「それはうちではちょっとむずかしいな」というところだって存在するでしょう。

B型肝炎訴訟において、弁護士事務所との相性というのはとても大事なものです。「あそこはとても良い」とか「大手だから安心」という他人の評判にほだされて委任してみたところ、とんでもなく高い手数料だったり、ものすごいぶしつけな対応だったりすることはまったく珍しい話ではないのです。

なお、一言付け加えておきますが、雑誌やテレビCMなどで露出しているからといって必ずしも良い事務所であるとは言い切れません。また、インターネットでの弁護士事務所の評判はあてにしないことです。弁護士事務所の中には広告会社を雇っているところもあるため、インターネット内での口コミや評判は「絶対」にあてにしてはいけません。これはグーグルマップによる事務所概要のコメントやヤフー知恵袋の返答欄などでも同様です。

B型肝炎訴訟において良質な事務所を見つけるのは自分の判断がほとんどです。繰り返しになりますが、そのためにはまずは無料相談を徹底して使い倒しましょう。電話口でも直接質問をすることにより、その弁護士の能力の高さや、言い方は悪いですが、傲慢で天狗な弁護士だったり、銭ゲバ丸出しの弁護士だったりといった人間性も判断ができます。

そして、これでダメだと思えば即切り捨てることをおすすめします。弁護士は交渉のプロですので、だらだらと関わることは辞めるべきです。逆に最初に弁護士先生だからなどと大ざっぱにしか質問をしなければ、後になって取り返しのつかない事態になりかねません。

まとめとして、良い弁護士を選ぶには、まずは事前にきちんと質問をすること。そして向こうからの質問の質を吟味することです。それによってきっと自分に一番ピッタリくる法律事務所も見つけられるはずです。

B型肝炎訴訟ではときに弁護士からの耳の痛いアドバイスも受け入れる

B型肝炎訴訟で最終的に責任を負わねばならないのはどこでしょうか。国です。国の集団予防接種によって被害者の方はB型肝炎に感染したのですから、国は当然、それについて責任を負わなければなりません。

しかし、国の方ではガイドラインを定め、証拠を提出しない限りは救済ができないという態度を貫いています。B型肝炎は集団予防接種の他にも感染経路があるため、ある程度までそれは仕方がない面もありますが、それであっても、あまりにも過去の予防接種が原因であるために、証拠を揃えきれずに泣き寝入りになっている被害者の方も国内には山ほど存在しているのが実情です。

さて、これはとくにお年を召した高齢者の方に多いのですが、B型肝炎で提訴を行うための証拠書類の収集の際、病院側に文句をいったり、役所の職員にあたったりする被害者の方がときおり散見されます。

病院の窓口に向かって「お前たちのせいで自分はこんな目に遭ったんだ」といったり、役所に「お前たちが悪いのに、どうして書類を自分たちから提出してこないんだ」と文句をいったりするというケースです。

これはあまり良い行為であるとはいえません。もちろん、悪いのは国であり、感染者の方にはひとつの責任もありません。でも、病院の窓口の看護師さんや市役所の若い職員の方に文句をいってもしょうがないのです。彼らは関係がないのです。

とくにこのように文句を言い続けると本来であればスムーズに取り寄せられるはずのカルテが「なぜか」出てこなくなったり、届くのが極端に遅れることもあります。

弁護士はそのような段取りの際、病院や役所に対して交渉するのも仕事のうちです。でも、同時に感染者の方が病院の受付や役所に文句を言っているのであれば、その気持ちを汲み取りつつも、諌めることも大事な役割でもあるのです。

以前、とても高齢の感染者の方が病院の窓口でカルテの取り寄せが遅いと文句を言い続けたことがあります。病院の方が機嫌を損ねたのは、はためにも明らかです。

病院にはさまざまな病態のたくさんの患者さんが毎日訪れます。そのようなところですから、病院の人にB型肝炎に感染したという辛い気持ちのすべてを理解することは困難です。

B型肝炎訴訟を終わらせ、それによって国に謝罪と救済を求める。その行動をいかに真摯に行うか。その行動だけに意識を絞る気持ちも大切です。

B型肝炎訴訟は深く調べるより、気軽に弁護士に相談を

B型肝炎訴訟では、母子感染で既に母親が逝去されていたりなど、ときに複雑な事情で行き詰まってしまっている患者さんもいます。

肝炎訴訟は国(厚生労働省)が手引書として、訴訟のためのガイドラインを出していますが、実はこれは画一化された教科書のようなもの。人生が教科書通りにはゆかないように、B型肝炎訴訟も実はご相談者によって、一人ひとりの提訴の準備がまったく異なるのです。

たとえば先の母子感染でいえば、母子健康手帳がないという人は相当数いらっしゃいます。しかしそれであっても、よくよくお話を伺ってみたところ、健康手帳以外の資料や証拠によって和解まで至ったというケースもたくさん存在しているのです。

逆に無症候性キャリアのため、体調は万全で、病院に一本電話を入れたところすぐに証拠となるカルテが手に入ったという人の方がまれなのです。

B型肝炎訴訟における弁護士の業務は、感染者の方からしっかりとお話を伺い、多少複雑だったり、難しいと思える証拠集めであっても、提訴が行えるような切り口を作ることでもあるのです。

こればかりは、弁護士個々人の経験や能力、そして取り扱ってきた業務の範囲によって大きく左右されます。

B型肝炎訴訟を行うのであれば、医療問題に強い弁護士にご相談することをお勧めします。

B型肝炎訴訟で弁護士に委任する本当の理由

弁護士は紛争解決のスペシャリストです。日本の社会の中で「こうしなければいけない」と定めた法律を超えているのではと思われる事態が生じた際に活躍をします。

ただし、法律では「こうしなければいけない」もしくは「このようなことをしてはいけない」と定めていても、そこには解釈の余地があります。国民一人ひとりが置かれている状況は無限にあるためです。そして人と人とが相対すれば、そこには考え方の食い違いが生じることは少なくありません。

それを整然と、誰にでも理解できるように説明することが弁護士という業務の本質のひとつです。これはつまるところ、交渉という業務でもあるのです。

さて、B型肝炎訴訟において、国は被告であるにも関わらず、原告側の弁護士費用の一部を負担しています。

B型肝炎訴訟は文字通りの裁判です。裁判をするには弁護士が必要。だから国はその費用を負担しているのだろうと一般のかたは思いがち。

確かにそれはその通りです。しかし弁護士はそれ以外のあらゆる面で必要になることが少なくありません。以前のコラムでも申し上げたように、B型肝炎訴訟の証拠は非常に古いカルテの開示請求をするケースも多数あります。

このようなとき、病院側は国が定めた指針によって開示を断ることもあるでしょう。感染者の方やその親族の方からすれば「なぜ」としか思えないようなかたちで証拠が集められない事例もあるのです。でも、病院側の解釈からすれば、それは案外まっとうな解釈であるかもしれません。

弁護士に委任をすることの本当の価値はこのようなときにあります。病院側がいくら理由を並べてカルテの開示を拒んだとしても、紛争解決のスペシャリストである弁護士が交渉に立てば、まずカルテ開示の確率は格段に上がることでしょう。ましてや正当な理由もなくカルテの開示を病院が拒んだとすれば、弁護士は開示請求として、あらためて病院を相手に訴訟を起こすことだってできるのです。

実際、探せばカルテはあるにも関わらず、おそらくは「面倒くさい」という理由で、カルテの開示を拒んだと思える病院も実際のところ存在するようです。しかし、ご相談者本人ではなく、委任を受けた弁護士が話を始めるや、病院側も急激に態度を豹変させるものなのです。

そしてこれはあくまでも病院側へのカルテの開示という一つの段取りに過ぎません。訴訟に至る準備の段階で、さまざまな問題が起こり得ます。

B型肝炎訴訟において、弁護士が必要になるのは何も裁判だけではないのです。一から十までありとあらゆる段階で弁護士の意見は求められます。だからこそ、B型肝炎訴訟において弁護士への委任は必須といえるのです。