B型肝炎と訴訟問題を考える

はじめまして。 B型肝炎に感染し、これまでとてもつらく、苦しく、悲しい思いをされたことでしょう。ここでは一緒にB型肝炎と訴訟問題について考えていきたいと思います。ここでの知識が、あなたのお役に立ちますように。

考え方・心構え

B型肝炎訴訟で和解が遅れやすいポイント

B型肝炎訴訟を行う際、大きな弁護士事務所に委任したにも関わらず、思った以上に和解が遅れてしまっているという話を耳にすることがあります。

そもそもB型肝炎訴訟は半世紀近く、場合によってはそれ以上昔にさかのぼって原因を突き詰める必要があります。このため、たとえば母子健康手帳が見つからないとか、感染者であった家族が死亡して久しいため、資料を探すことが難しいという問題に突き当たることもあるようです。

ただ、それも含めて調査を行えるからこその弁護士なのであり、それができずに問題を抱えてしまうのであれば、あまり良い弁護士であるとはいえません。

B型肝炎訴訟で和解が遅れやすいポイントは2つあります。

1つは、弁護士の手際の悪さ。これは先に述べたように証拠をきちんと揃えられないことにあります。証拠が揃っていないにも関わらず、先に提訴だけを行うと後々、何度も病院に通ってカルテを集めたり、検査を受けたりといった手間がかかることになってしまいます。

それどころか、決定的な証拠不足になってしまえば、和解はもとより、中途で訴訟を断念という最悪の結末にもなりかねないのです。

もう1つは、国側の体制の不備にあります。B型肝炎訴訟での書類のチェックは、厚生労働省と法務省にて取り扱いますが、これが文字通りのお役所仕事なのです。人員もあまり揃っていない上にチェックが非常に厳しく、少しでも証拠に不備があると追加資料の提出を容赦なく行ってきます。

もしここで追加資料を求められた場合、資料探しに加えて、役所側の順番も後回しにされてしまいます。この厚生労働省のチェックをする人員が極端に人手が少なく、一ヶ月に処理できるのがせいぜい200~300人程度のようです。そうなればもちろん、和解までの期間も延びてしまうことになりかねません。

弁護士事務所が放置しているというのでなければ、肝炎訴訟は少し待つ気持ちも必要になることもあるでしょう。

肝炎訴訟で弁護士を利用する意義

いくら給付金が支給されるといっても、B型肝炎の感染者の方はごくごく普通の日本国民です。一般の人にとって訴訟を起こして裁判をし、和解にいたるというのはなかなか敷居の高いイメージがあるのではないでしょうか。

またいくら弁護士費用が国から助成されるといっても、法律事務所や弁護士は一生に一回使うことがあるかどうか。とても重々しくて面倒なイメージがつきまっているように感じます。

弁護士もごく当たり前の人間


弁護士といってもごく当たり前の人間です。市役所が専門の手続きをしたり、お医者さんが専門の治療をしたり、建築現場の大工さんが専門的な加工を施したりすることとまったく同じなのです。法律事務所の人間でも、仕事が終われば居酒屋で一杯飲んだり、電車に傘を忘れたりすることもあります。

だからこそ、肝炎の感染者の方は、ご自分の友人や周囲の人々に接するのと同じように一切の敷居の高さを感じることなく、まずは無料相談を使い倒してみてはいかがでしょうか。

B型肝炎と心のケアについて

B型肝炎で悩まれている方



感染者の方の中にはとても辛い思いをしている方もいるはずです。集団予防接種によるウイルス性の肝炎にかかったほとんどの方は、ウイルスを完全に体内から排除することができません。このため、定期的な診察が必要になったり、生活習慣を見直す必要が生じます。

また、仕事・交友関係・恋愛・結婚・出産など、私生活に関わる多くの事柄に制限が課されます。ですので集団予防接種によってB型肝炎にかかった方は「どうして自分だけがこんなひどい目に」と必ず思うことでしょう。

このような方の中にはうつ病にかかってしまったり、荒んだ生活へと進んでしまう人も中にはいます。しかし、逆にB型肝炎にかかっても、より一層前向きに、真摯に人生を送っておられる人だってたくさんいるのです。

健康の維持を目標に



B型肝炎は放置しておけば慢性肝炎や肝硬変・肝がんなどへと進行してゆく可能性が否定できない病気です。今まで検査や治療を放置してしまっていたり、もしくは病気が進行してしまっても、けっして「もう知らない」とばかりに投げ出してしまってはいけません。

今まで以上にしっかりとした心構えと細心の注意をもって健康に臨むこと。これは身体の安定のみならず、精神のケアとしても何よりも大事なことです。なぜなら、万一それでもどうしても病気が進行してしまった場合にも後悔しないからです。「あのときああしていれば」と悲しい思いをして毎日を悔やむのではなく、「これまでも一生懸命やった。これからもできるかぎりがんばる」という思いを持つことで、より充実した人生を送ることができるためです。

「どうして自分だけが」とは思わないこと



集団予防接種によってB型肝炎にかかってしまった。これは人生の理不尽であり、感染者の方にただの一つも落ち度はありません。しかしそれにも関わらず、たとえば交友関係や恋愛など、病気によって大事な日常が制限されてしまう可能性も十二分にあるでしょう。

このとき「どうして自分だけが」とは思わないことです。たとえば恋愛においては、抗体を相手に打ってもらったりする必要もあると思います。それは感染者の私生活における一つの枷となることは否定できません。

でも、世の中には恋愛が苦手な人がいます。コミュニケーションがヘタな人がいます。顔や性格がいまいち(?)なせいで、四苦八苦しながら努力している人だっています。お金やら経歴やらで相手にふられてしまう人だっているでしょう。

それぞれにとってこれは大きな恋愛の枷です。同じように私生活でも学歴がいまいちで入りたい会社に入れない人もいれば、話し方がヘタで好きな仕事につけない人もいるのです。

生活においてB型肝炎は一つのハードルになることもあります。でもそのせいで人間性を高めたり、より深く人生について思索することだってできるでしょう。肝炎を悪く取るのではなく、それをどう活かして充実した人生へと転換するか。たとえ少々病気が進行したとしても、常に前向きに物事をとらえることで、より一層幸せな人生を送ることができるはずです。

B型肝炎と完治について

目的を明確にし、肝炎と上手につきあう

B型肝炎ウイルスは肝臓内の個々の細胞内にウイルスが入り込むため、現在の医療技術ではHBVを完全に排除することはできません。このため、HBVは根絶させるのではなく、あくまでも増殖をしない形に抑えるか、抑えられるような健康な肝臓に戻すことを目的にすべきです。

B型肝炎は完治できない。そういわれると多くの感染者の方は心からがっくりと来てしまうかもしれません。しかし、B型肝炎の感染者は現在でも少なく見積もっても40万人以上。そのほかの肝炎の患者さんを含めれば数百万人規模といわれています。同じ思いをしながらも明るく楽しい日常を送っている人もたくさんいるのです。

人の苦しみはそれぞれが抱えているものです。B型肝炎問題は確かに国の過誤によって発生したものであり、感染者の方に何ら問題があるわけではありません。でも、必ずしもB型肝炎に限らず、誰もが何らかの悩みを抱えているものです。健康問題であれば、たとえばがんだったり、血液だったり、他の臓器だったりすることでしょう。また、人間関係や金銭の悩みは誰もが抱えるものです。

だからこそ、B型肝炎は完治できないと聞いて肩を落とす必要はありません。誰もが同じくらい重いそれぞれの悩みとうまく付き合いながら人生を送ってゆくのです。

繰り返しになりますが、肝炎のような病気であればそれが進行しないように定期的に診断を受けたり、ウイルスの増殖を抑える治療や薬を素直に受け入れることが何よりも大事。それさえ守ってゆけばB型肝炎はけっして怖い病気ではありません