B型肝炎と訴訟問題を考える

はじめまして。 B型肝炎に感染し、これまでとてもつらく、苦しく、悲しい思いをされたことでしょう。ここでは一緒にB型肝炎と訴訟問題について考えていきたいと思います。ここでの知識が、あなたのお役に立ちますように。

基礎知識

B型肝炎の基礎知識9

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■B型肝炎と入院


軽度の肝硬変や初期の肝がんなど、生活できる程度の症状であっても、入院をする必要が出てくることもあります。そこでここでは入院生活に必要なものを記載します。

重い病気であれば黄疸などを伴って、身体がだるく、かゆみが出たりするために、最低限の生活必需品などで良いのですが、それでも入院時にはときに思わぬものが必要になることも。

入院時は一種の長期旅行です。思った以上に色々なものが必要になり、入退院のとき、びっくりするくらい持ち込み用品が多くなることもあるでしょう。最低限必要なものに関しては病院から指示を受けますが、それ以外は下記を参考に、ご自分の生活に合ったものを用意しましょう。



最初に必ず準備するもの

・入院申込書
・健康保険証
・診察券
・印鑑
・保証金(最初に数万円の保証金が必要な病院もあります)

上記は絶対に必要になるもの。これらを用意しないと入院できず、取りに戻ることになります。最初に必ず用意しておきましょう。


病院から必ず指示を受けるもの

寝間着 パジャマ(寝間着)は2~3着ほど用意しておきましょう。2着でもだいじょうぶですが、万一汚してしまった場合にも備えて、3着あればまず安心です。

下着・靴下・シャツ 下着は5~6枚は用意しておきましょう。下着は毎日変えるものです。汗で濡れたり、汚してしまったりすることもあります。洗濯できないこともあるかもしれません。

ジャンパー・ショールなど 寒いときに少しはおるものがあると便利です。

タオル 小さめのスポーツタオル 枕に巻いたり、汗をふいたりなど使うことが多いものです。2枚といわれることが多いかもしれませんが、こちらも3枚程度あれば便利でしょう。

バスタオル 概ね2枚を用意といわれることが多いです。

洗面器 身体が思うように動かないときなど思わぬ事態のときに使うこともあります。

洗面具 こちらは必ず携行するもの。歯ブラシ・歯磨き粉・シャンプー・リンス・ボディソープ・くし・ブラシなどです。

マグカップ 湯のみといわれることもありますが、割れにくいマグカップを用意すると便利です。

スリッパ・ハンカチ・ティッシュ


病院から指示されにくいがあると便利なもの

・ノートPC 使えない病院もありますが、あるとやはり便利な万能機器です。また通信はできない病院がほとんどです。事前に病院に訊いておきましょう。

・携帯電話 原則病院内では使えません。それでも病院の入り口などで使うことも多いでしょう。

・テレホンカード 家にあれば持っていきましょう。なくても病院で買えることが多いです。

・イヤホンとラジオ 時間があるときに使うと暇つぶしになることが多いです

・プラスチックの小物いれ 間に仕切りがあるものを用意すれば薬をしまっておくこともできます。

・消臭スプレー 病院内では悪臭がすることがまれにあります。また、トイレ使用後のエチケットにも使えます。

・筆記用具

・洗濯バサミ 忘れがちですが、ほぼ必ず使うものです。

・目覚まし時計 小型の安価で丈夫なものを用意しましょう。


上記の多くは病院の購買で購入することもできます。しかし体調が悪いときには身体を動かすのもおっくうになるかもしれません。事前に準備しておくに越したことはありません。この他、個人で時間を潰せるものも用意すべき。本や簡易なゲーム、雑誌なども用意しておくと便利です。


B型肝炎の基礎知識8




■ジェノタイプAeによるB型肝炎は検査時に判明する


B型肝炎に感染しているからといって、誰もが誰も、自分がどのような経路で感染したのかわかるわけではありません。たとえばごく一般的な普通の生活をしているにも関わらず、ある日突然具合が悪くなり、病院に搬送されたところ肝炎が発覚したという人もたくさんいます。

B型肝炎訴訟とは、国の集団予防接種か、もしくはそれが原因での母子感染・父子感染の方への和解訴訟です。しかし、ご自身の感染原因がよくわからないという方も相当数いるのが実情です。

このような方は急性肝炎と慢性肝炎を勘違いしていたりすることが往々にしてあります。集団予防接種や母子感染が原因でのB型肝炎感染者の方は、出生直後や小児期にB型肝炎ウイルスに感染したため、体内に免疫ができておらず、肝臓と免疫が共存する関係になっています。

対して成人後に肝炎ウイルスに感染した方は、肝炎ウイルスが肝臓を侵食しようとした場合、免疫が働くために一時的に体調が悪化します。いわゆる急性肝炎です。ただ、免疫がしっかりと働いた結果、一時的に具合が悪くなっても、後日体内からウイルスは完全に排除されるため、以降はウイルスが原因で肝臓が悪化する可能性は非常に低いものとなります。

ただし、上記以外に平成8年以降に確認されたジェノタイプAeと呼ばれる肝炎ウイルスの場合、成人後にウイルスに感染しても免疫がしっかりと機能しない可能性があることが確認されました。ジェノタイプAeのウイルスに感染すると、概ね1割前後の感染者がその後、持続感染することが確認されています。いわゆる慢性肝炎となってしまうのです。

このジェノタイプAeによる感染は、国による集団予防接種や母子感染で肝炎ウイルスに感染した方とは時期的に合致しません。このため、もしご自身のウイルスの感染経路がいまいち判断できない場合にはまずは肝炎検査を受けることをおすすめします。これにより、ご自身の数値・症状はもとより、ウイルスのジェノタイプも判断することが可能となります。




■B型肝炎で抗体ワクチンを打つべきか否かの問題は


B型肝炎ウイルスの感染者の方や、その関係者の方の中には「抗体のワクチンを打った方が良いか」という悩みを抱えている人がいます。

直接的に訴訟に関係はしなくても、B型肝炎関連でこういう質問も実はとても大切な事です。

上記のようなワクチン関連についてご質問される方は、感染者ご本人よりも、ご家族、ご友人や恋人などが多い印象を受けます。そして結論から述べると「必ずワクチンは摂取すべきである」というものになります。

一口でB型肝炎といっても、その感染経路はさまざまです。正直申し上げますが、国からの集団予防接種やそれに伴う母子感染で肝炎ウイルスに感染した方は、非常に人間としてまともです。常識をわきまえたごくごく普通の日本人だという印象があります。

しかし、お話を伺っていて漠然と、海外での性交渉か、違法な内容で注射器を使いまわした結果、肝炎にかかったとおぼしき方々は同じ人種だと思えない有様です。

中でもひどいのは、自分が肝炎に感染していることを知りながら「大したことじゃない」と放置を決め込んで、パートナーに感染させても平気でいる人です。とくに海外での性交渉で肝炎に感染した若い男性などにそのような態度が目立ちます。

正直和解訴訟とは全然関係のない内容ですが、そういう方をパートナーに持つ女性の方には「自分はワクチンを摂取した方が良いのか」という悩みを持つ人もいるようですが、結論から言えば、今後ともその相手と関わるつもりならば、必ずワクチンを打つようにすべきです。

しかしそうは言っても、お金がかかるからということで自分に都合良く考えがちなものが人間でもあります。ただ、B型肝炎ウイルスに感染するのは、税金の滞納だの、車の駐車違反だのといった程度の話とはまったく異なります。そういうリスクをわかったら問答無用で抗体ワクチンは打つべきです。

くれぐれもその点だけは頭に入れておきましょう。

B型肝炎の基礎知識7

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・B型肝炎感染者の方は、会社や仕事でも不安を抱える
・B型肝炎の捉え方はさまざまだけれど



■B型肝炎感染者の方は、会社や仕事でも不安を抱える

B型肝炎の感染が判明したことで、会社勤めについて大きな不安を抱く方も少なくないようです。

会社というのは営利のみを考えています。このため、社員の中にB型肝炎の感染者がいると判明した場合、法律的には不当であっても、内々で圧力をかけて社員をクビにしたり、自主的に退職に追い込むようなブラック企業も実際にはたくさん存在するでしょう。

またそれに加えて、感染者の方ご自身の不安もあります。同僚や取引先と会話をすることでつばが飛んだら相手に迷惑がかかってしまうのではないか。カッターナイフだの、ホチキスの針だので指を切ってしまい、そのせいで周囲を感染させてしまうのではないかなど色々と心配事が重なるようです。

よくあるご相談としては健康診断が挙げられます。これでB型肝炎が発覚してしまうのではないかという危ぐです。また、肝炎が進行して肝がんなどにかかり、手術が必要となったとき、会社に診断書を見せなければいけなくなった際、B型肝炎の事実が会社に知られてしまうことを心配している方もおられることでしょう。

このような場合にはまずはかかりつけの病院で相談することが大切です。



■B型肝炎の捉え方はさまざまだけれど


B型肝炎の感染者の方、とくに母子感染の方の場合、時代的な背景もあるために、ウイルスや肝炎の捉え方が人によって本当に違います。

ある高齢の女性は、娘さんともども母子感染であるにも関わらず「大した病気じゃないし、先が長いわけでもないからいちいち訴訟なんてめんどうなことしたくない」と言って、検査に対してひどく消極的でした。このため、娘さんの方も困っていました。

はために見ると「なんて一方的で身勝手な母親だ」と思う人もいるかもしれません。でもこれにも理由があります。かなり昔に肝炎と診断された方の中には、医師からひどく軽い調子で「慢性肝炎ですね。薬を飲んで下さい」といわれるだけの人も結構たくさんいたようです。また母子感染の場合でも、医師が軽く「母子感染ですが、発症しないように予防をしてください」だけ軽く伝えられ、ことの重さがさっぱり理解できていない感染者の母親がたくさんいる印象もあります。

・周囲への思いやりが不可欠

これとは逆のケースもあります。B型肝炎について自分で思い込みを重ねてしまっている方の中には「B型肝炎というのはね。もう二度と助からない病気なんだ。人聞きもすごく悪いし、なるべくこんなことは知られたくない」と言うような内容をずっと繰り返しているような人もいます。

肝炎はそれぞれの人生観に大きく左右されます。中には母子感染で生まれた男性で「こんなの気にするほどのことじゃないんだよ」と言い張ったものの、パートナーの女性の方が怖くなってしまい、病院に「どうしたらいいでしょう」と相談したというケースもあります。

上記の男性などは問題外で、自分の病気に対してあまりにも無頓着すぎます。肝炎そのものは周囲の人が予防接種を受ければ心配することはありません。でも、予防接種を受けずにパートナーと肉体関係を一方的に持ちたがるというのは論外です。万一何の予防接種も受けず、しかも自分の病気を知って相手に感染させたのであれば、最悪のケースでは告訴される可能性すらあります。

・信頼できる医師と法律に則る

では、何が正しいのか。肝炎をどう捉えるべきなのか。これについて断言できることはただ一つ。信頼できる医師のアドバイスや法律に適正にのっとることです。それをやらずに自分の都合を優先させて「めんどうだから」とか「そっとしておいて欲しいから」とか「大した病気じゃないから」と決めつけてしまえば、後に感染者ご自身はもちろん、周囲に深甚な被害を生じさせた場合、取り返しがつかないことにもなりかねません。

加えてB型肝炎訴訟については国が補償をすると明確に述べています。自分のためにもみんなのためにも、必ず検査を受け、肝炎訴訟を行うことを強くおすすめいたします。

B型肝炎の基礎知識6


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・肝炎を軽く伝える医師に要注意
・B型肝炎の著名人と書籍


■肝炎を軽く伝える医師に要注意


医師の中には母子感染、もしくは無症候性キャリアの方に対して「B肝ですね」というように軽く一言で伝えておしまいにしてしまう人がいます。

私たちは医師ではありません。「B肝です」などとさらりといわれても、何のことだかわかる人などほとんどいないでしょう。実際、自分がキャリアであることを知らなかった母親が出産時、「子どもはB肝キャリアになります」といったことを医師に軽く一言でいわれたものの、出産時のてんやわんやの騒ぎの中で母親は「ああそうなんだ」と、あまり重く受け止めず、後々になって大変なことだったと気づくケースもあるのです。

このような事態に対してたとえば感染者や母子感染の母親が強く抗議をしたとしても、医師は「自分はきちんと伝えました」の一点張りになってしまうことも予想されます。


■健康診断での医師の自発的な説明はあてにしない

学校や会社の健康診断、また出産や検診など、何らかの診断の際に「肝炎」と伝えられることがあります。そのときには「肝炎ってなんですか」としっかりと説明をお願いすること。

肝炎についてあまり詳しくない医師であれば、うやむやなことをいってくることもあります。そのときには大きな病院への紹介状を書いてもらいましょう。また、肝臓専門の病院へ行って、適切な治療を受けることも不可欠です。

また集団予防接種によるB型肝炎であると診断されたのであれば、B型肝炎訴訟についても考えてみることは不可欠です。




■B型肝炎の著名人と書籍


B型肝炎に感染した有名人といえば、多くの方は石川ひとみさんを思い浮かべられることでしょう。

石川ひとみさんは1978年に歌手としてデビューしました。多くのテレビ番組に出演しつつ、代表作の「まちぶせ」で人気を博し、紅白歌合戦にも出場したのです。

しかしながら1987年、突如としてB型慢性肝炎を発症。一年間の療養を経たものの、その後、所属事務所から突然解雇されたり、また多くの偏見の目にさらされたりと苦しい時期を過ごされたようです。

著書の『いっしょに泳ごうよ―愛が支えたB型肝炎克服記』ではB型肝炎ウイルスによる慢性肝炎の発症と、芸能生活との板挟みにある苦しみ、周囲の心ない差別の声、プール利用や握手の拒否など、肝炎との戦いとその乗り越えに至るまでの日々を綴っておられます。

B型肝炎は一人で抱え込むものではありません。石川ひとみさんがこのような素晴らしい本を書かれたのも、ご本人の人格の高潔さはもちろん、彼女の周りの人々が心から彼女を励まし、応援したことも一因としてあるはずです。

肝炎に感染することで、多くの人々から自分がいかに支えられ、助けられているかを再確認し、周囲の人々に感謝することができる絶好の機会でもあります。

ご興味のある方はぜひ石川ひとみさんの著書を拝読することをお勧めします。

B型肝炎の基礎知識5

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・B型肝炎に対する差別と偏見

・B型肝炎ウイルス保持者の生命保険
・B型肝炎と性行為


B型肝炎に対する差別と偏見


大変に許しがたいことですが、B型肝炎については差別と偏見があるようです。これは肝炎ウイルスが特殊な感染経路を持っているためです。

肝炎訴訟が行われていた2010年から11年にかけて、ある元大学教授が週刊誌に「肝炎訴訟は“たかり”である」という旨の記事を出しました。

彼の言い分では集団予防接種による因果は不明であり、むしろB型肝炎の感染理由はエイズと同じとのことだったのです。つまり、海外での買春・輸血・麻薬の注射器の使い回しなど、社会的に認められにくい行為によってのみ感染するものなのだという言い分でした。

確かに肝炎の感染にはそのような経路もあります。しかしたとえば海外での買春や麻薬など、どう考えても成人しなければ行えないような行為でB型肝炎に感染したとしても、成人は既に抗体ができています。つまり、適切な治療によってウイルスは完全に排除できるのです。

それに対して国による集団予防接種で感染した人はほとんどが小児期。母子感染という経路であっても、新生児が産道を通るためにウイルスに感染したのです。免疫が存在しない赤ちゃんがウイルス感染したからこそ、感染者の人たちは、大人になってもウイルスが完全に排除できず、無症候性キャリアや慢性肝炎などの病気で苦しんでいます。

それを“たかり”などという言葉で差別を助長しようとするのはけっして良いこととはいえません。ただでさえ苦しい思いをしているB型肝炎の感染者の人たちに追い打ちをかけるようなことだけは厳に慎むべきです。



■B型肝炎ウイルス保持者の生命保険

集団予防接種によってB型肝炎ウイルスに感染してしまった方や母子感染で感染してしまった方の中には、ご自分が病気のキャリアであるため、生命保険などの任意保険に加入できるか懸念を抱いておられる方もたくさんいます。

そもそも生命保険の加入条件の幅は非常に広く、たとえば65歳以上の方、過去に重病やけがをした方、持病を持っている方など、多岐にわたります。

肝炎においてもそれは同様です。大手の保険会社であれば、B型に限らず、A型やC型など、各種の肝炎を前提として加入が認められるものがたくさんあります。もちろん加入にあたっては健康状態など、いくつかのチェック項目が存在しています。ただ、あまり心配する必要はありません。逆に「自分がB型肝炎だから」などと生命保険への加入を避けてしまうことの方が問題です。

とくに無症候性キャリアであれば、単にウイルスが肝臓にいるというだけですので、加入に際しての懸念はほぼ不要。ただし、加入の際にご自身がキャリアであることを保険会社に伝えることだけはくれぐれも忘れないようにすべきです。



■B型肝炎と性行為

どんな人でも恋愛はします。その過程で性行為も行うはずです。
しかしB型肝炎ウイルスはHIVよりも遥かに感染力が高いため、恋愛や結婚・出産において心配を覚える人はたくさんいます。

結論から述べると性行為でB型肝炎に感染する可能性は高いです。ただし、キャリアの体内におけるウイルスの活動性によって結果は違います。活動性の低いウイルスであれば、性行為を行ったとしても相手の体内から排除される可能性も十二分にあります。

B型肝炎は粘膜感染による確立が高いものです。キスや口を使った愛撫などで感染する可能性も否定できません。

では性行為を行えないかといえば、そんなことはありません。相手に予防接種を受けてもらうことでB型肝炎の感染を抑えることはできます。もしそれを知らずに性行為を行っていたのであれば、まずは検査を受けることをおすすめします。

B型肝炎の検査においては血液検査が基本となります。血液中のHBV-DNA量、HBe抗原を調べることで感染しているかどうかも判断できます。その場合、肝臓専門医の診断を受けることがより望ましいといえるでしょう。