「いちごいちえ」は有名な言葉です。慣用句としても使われるほどに多くの方になじんでいることでしょう。ほとんどの人は一期一会の意味を、人との出会いは一度きりだから大事にしよう、とか、もしくは、一度だけの出会いのように人を大事にしよう、といったかたちで捉えています。

その言葉の捉え方は別に間違っているわけではありません。人を大切にするのはとても尊いことです。ただ、この言葉にはもっと深い意味がこめられています。

わたしたちは一人ひとりが世界を持っています。自分の親・兄弟・伴侶や子どもに対する愛情は、他の人にはけっして理解できないものです。お葬式で故人を偲ぶ際、たくさんの人が集まり、悲しみます。でも、その故人にどのように関わっていたのかはそれぞれです。

そのような意味で、わたしたちは一見似ているように見えて、それぞれがそれぞれの世界を生きています。

そしてまた、わたしたち一人ひとりであっても、絶えずその心はうつろってゆきます。おもしろくない出来事でイライラしている最中、セミの声を聴いても「うるさいな」と思うだけでしょう。でも次の瞬間、少し前に告白した異性から良い返事をもらったとしたらどうでしょう。たちまちセミの声は「うれしいなあ。セミの声が聴こえる。ああ、夏だなあ」とうっとり心に染み入るはずです。

わたしたちを取り巻く世界も、周囲も、人々も、そして自分自身の心も身体も、まるで小川のせせらぎのように縷縷(るる)変化し続けます。この意味で、今この瞬間に出逢うすべてのもの、すべての人、そして自分自身の心をも含めたすべての思いは、今この瞬間を逃せば二度と出逢うことのできないものなのです。

B型肝炎に罹患して苦しさを感じたとき、その思いを手放して、ただ無常に変化し続けてゆく、自分を含めた世界の一切合切を、ただ何も思わずに見つめてみてはいかがでしょうか。きっと心が落ち着いてくるはずです。