「きょうげんじょうじゅ」と読みます。

世に言う「禅問答」の話です。

香厳というお坊さんがあるとき、小僧さんに向かって「高い木の枝に口でぶらさがれ」と命じました。そしてそのまま「禅の極意とは何だ。答えろ」と訊いたのです。

答えれば落下して小僧さんは死んでしまいます。答えられなければ小僧さんは答えられない未熟者のまま。さあ、どうすればいいでしょう。というのがテーマです。

人は生きるにあたってときどき大きな問題にぶつかります。どんな人でもです。

ましてやB型肝炎という大難題に突き当たった人にとって、これにどう対処すべきかは人生の一大事。

そういうとき「わからない。知らない」とほっかむりをして逃げてしまうのは簡単です。でも、逃げてしまうといつまでたっても難題はそのまま。どんなに逃げたつもりでも難題はいつでもつきまといます。

でも、ときに命に関わるような大難題であっても、真正面からそれを見据え、自分なりに乗り越えようと尽力する。

人によってそのやり方は色々でしょう。それはそうです。同じB型肝炎であっても、人はけっして他人の人生を生きることはできません。自分の人生を一生懸命生きることしかできないからです。

しかし、その難題に真正面から取り組み、苦しくても一生懸命、今自分にできるせいいっぱいをやり遂げたそのとき、その人は、どんなに言葉を尽くしても語り尽くせない、途方もなく尊い、普通の人では絶対に得られない得難いものを手に入れることができるはずです。