B型肝炎訴訟ではカルテの開示は必須の資料



B型肝炎訴訟を行う際、被告である国(厚生労働省・法務省)が求める証拠資料の1つに、感染者のカルテがあります。B型肝炎と一口にいっても、その感染経路はさまざまであるためです。

国による集団予防接種とは関係のない感染経路からB型肝炎に感染したにも関わらず、和解や給付金の支給を行っていたとあっては国は大変な問題を抱えてしまいます。

この問題を解消するため、国は感染者が、国による集団予防接種で注射針の使い回しをされたか、もしくはそれによる母子感染であるかの証拠を求めます。

これが裁判の際にカルテが必須資料となる理由なのです。

感染者の親族が取り寄せをする場合、問題が生じることも



カルテというものは個人情報の中でも最たるものです。裁判のようなよほどの事情がない限り、まず第三者がそれを目にすることはありません。

このため、たとえB型肝炎の感染者の親族が、病院にカルテの問い合わせをしても、事情の伝え方が悪いと断られる可能性も否定できません。

とくに既に感染者の方が逝去されており、遺族の方がカルテの取り寄せをする場合には病院側は繊細な判断を迫られることがあります。これは厚生労働省による「診療情報の提供等に関する指針」と呼ばれるガイドラインが原因です。

ガイドラインの中には「患者本人の生前の意思、名誉等を十分に尊重することが必要である。」「特に遺族間に争いがある場合には、一層慎重な配慮が必要とされる。」との文言が記載されています。

このような内容は病院側に解釈の余地があるため、遺族の方がカルテの開示を請求しても、問題が生じるのと感じたのであればその開示を拒む可能性もあり得ます。

カルテの開示を請求する前に法律事務所に相談を



カルテ開示の請求をする前に法律事務所にまず相談をすることは頭の片隅に入れておきましょう。

なぜなら現実問題として、カルテの扱いがいい加減な病院も無数にあるためです。実際、病院に問い合わせをしたところ、カルテを紛失しているというケースは少なくないためです。

とくにB型肝炎訴訟は感染時期が古く、ときに半世紀以上も前に受けた予防接種が原因となることも少なくありません。そうなるとカルテを探すのも一苦労になってしまいます。

加えて病院にとって患者さんのカルテというものは実に膨大な量になります。古い病院や大きな病院であるほどそれは確実でしょう。昔は電子データなどは存在しなかったため、古いカルテなどは病院ではなく、別の場所にある大きな倉庫などに保存してあることもあります。

そうなるとその中から調べ出してもらうかたちになるため、病院としては大きな手間がかかることになってしまいます。すると、最初に「これは面倒だな。最初に開示を拒んだ方が良いだろう」という流れになってしまう可能性だって否定はできません。

このように行き詰まる可能性があるとき、法律事務所に事前に相談をしておくと、カルテの開示がスムーズに進む可能性は十二分にあります。また必要だと判断したのであれば、法律事務所側もご遺族と一緒に病院にカルテの開示を請求することもできるでしょう。

B型肝炎訴訟において法律事務所が必要になるのは、何も法律的な部分や事務的な手続きだけではありません。交渉をする際には、それぞれが自由な解釈を持ちます。そのときに適切な理由と手順を用いたかたちでご相談者をサポートするのも、法律事務所の大切な役割なのです。